吐き気・嘔吐について
「吐き気」、「胸のむかつきがある(胸やけ)」の場合、消化器疾患からくるものが約7割で、残りの約3割が消化器以外の疾患からきていると言われています。 そのため、原因が消化器疾患と消化器以外の疾患のどちらなのかを判別することは、とても重要です。消化器疾患の場合では、例えば、胃潰瘍・十二指腸潰瘍や急性胃炎、胃がん、腸閉塞、虫垂炎などの疑いがあります。
消化器以外の疾患では、くも膜下出血や脳出血、心疾患(心筋梗塞等)、脳腫瘍などといった早急な処置が必要な疾患や、服用している薬の副作用、食中毒、心因性嘔吐、精神疾患(不安障害・パニック障害など)などの疑いがあります。
問診時に患者さまへ様々な質問をしていきながら、正確な診断を下していきます。 診断名を特定するにあたり、下記症状の有無は重要なポイントです。心当たりがありましたら、医師へご相談ください。
- ここ最近、急に頭痛が発生していないか
- お腹や胸が痛くないか、違和感がないか
- 吐しゃ物に血が混ざっていないか
(吐血が起きていないか) - 血便が起きていないか
嘔吐は主に二種類に分けられます。一つ目は「中枢性嘔吐」で、吐き気を感じる嘔吐中枢が刺激されることによって出てくるものです。二つ目は「末梢性嘔吐(反射性嘔吐)」といい、消化器や肝臓、腎臓、生殖器の疾患からくる嘔吐です。また、高カルシウム血症や低ナトリウム血症、薬の副作用が原因のこともあり、特に女性の場合は妊娠(つわり)の疑いも考えられます。
中枢性嘔吐
脳卒中(くも膜下出血、脳梗塞、脳出血)や
脳腫瘍などの脳疾患
脳卒中はくも膜下出血と脳梗塞、脳出血の三種類に分けられます。 くも膜下出血とは、髄膜の軟膜とくも膜との間にある、くも膜下腔から出血する疾患です。いつもと明らかに痛みが違う、激しい頭痛と吐き気・嘔吐などの症状が特徴で、発症後は早急な処置を行わないと命を落とす危険性があります。
処置が遅れてしまうと後遺症が残ってしまう恐れもあります。 脳出血とは、脳の血管が破れることによって出血してしまう疾患です。症状は吐き気だけではなく、激しい頭痛や片麻痺、顔面麻痺、半盲、運動失調なども現れます。そして、脳腫瘍を抱えている場合でも吐き気・嘔吐が見られます。
また、くも膜下出血や脳梗塞、脳出血、脳腫瘍などの場合、視野障害(視野狭窄や複視など)や言語障害(ろれつが回らない・言葉が出ないなど)なども併発します。このような症状を発見しましたら、速やかに受診しましょう。
薬の副作用
服用している薬によっては副作用として、吐き気・嘔吐などの症状が現れる場合があります。例えばですが、抗がん剤やオピオイド鎮痛剤などの医療用麻薬、ジゴキシンといったジキタリス系強心剤(ジギタリス中毒)、喘息の治療で処方されるテオフィリン、鉄欠乏性貧血の治療に用いる鉄剤などの薬剤では、副作用として吐き気・嘔吐が発生する場合があります。
食中毒
海水の摂取や、魚介類・肉類、水などの中毒や感染(ノロウィルスやフグ中毒、O157、カンピロバクターなど)などが原因で、吐き気・嘔吐を発症してしまうケースは多々あります。 とくに食中毒の場合は吐き気・嘔吐だけではなく、強い腹痛や発熱、下痢などの症状も併発しやすいです。
とくにフグ中毒の場合、舌や指先の痺れ、頭痛なども起きてしまいます。大変危険なので、素人調理は絶対に行わないでください。
精神的な要素(心因性嘔吐)
ストレスや過労、過度な不安、緊張などを抱え続けてしまうと、自律神経が乱れてしまいやすくなります。自律神経が乱れてしまうと、吐き気や嘔吐が起きやすくなります。 また心因性嘔吐だけではなく、不安障害やパニック障害などの精神疾患も、吐き気・嘔吐が起きやすい傾向にあります。
末梢性嘔吐(反射性嘔吐)
急性胃炎
胃やみぞおちの痛み(キリキリしたような痛み)や胸焼け、お腹の張りなどの症状があります。重症化すると下血・吐血も現れてしまいます。健康な状態の胃は、胃粘液を分泌することで強酸性の胃酸による刺激から自身を保護しています。この胃の保護ができなくなってしまうことで炎症が起きてしまうのを、急性胃炎といいます。
原因は食習慣の乱れや過度な飲酒・喫煙、ピロリ菌への感染などです。 急性胃炎を放置してしまうと、胃粘膜が荒れてしまうことで胃酸過多がおきてしまい、慢性化してしまう恐れがあります。胃潰瘍になってしまう可能性もあるので、放置せずに治療を行いましょう。当院では、胃カメラ検査で正確な診断が可能です。
胃潰瘍・十二指腸潰瘍
胃潰瘍・十二指腸潰瘍は、胃や十二指腸の粘膜が深く欠損してしまい、えぐれてしまう疾患です。原因は「ピロリ菌の感染」や「非ステロイド性の痛み止めなどの副作用」、ストレスによる自律神経の乱れなどです。 胃潰瘍も十二指腸潰瘍もみぞおちが痛くなりやすいのですが、胃潰瘍は食事中から食後に、十二指腸潰瘍の場合は夜間・早朝の空腹時に痛みが現れやすいです。
そしてどちらも痛みだけではなく、胃もたれや吐き気、食欲不振、血便(タール便)なども併発する傾向にあります。胃潰瘍・十二指腸潰瘍の有無は胃カメラ検査で確認できます。
胃がん
胃がんは進行してしまうと、吐き気や頭痛も併発します。 近年では胃カメラの性能・質が高くなっているので、初期胃がんの早期発見ができるようになりました。早期発見できれば内視鏡での除去で完治できるので、できれば胃カメラ検査で胃がんの有無を定期的に確認していきましょう。 また、ピロリ菌に感染してしまうと胃がんの発症リスクが高くなってしまいます。特にピロリ菌感染の疑いがある方(または過去に除菌された経験のある方)は、定期的に胃カメラ検査を受診しましょう。
虫垂炎
大腸の一部である、虫垂(ちゅうすい)に炎症が起きてしまう疾患です。一般的には「盲腸(もうちょう)」と呼ばれています。 初期症状は「ヘソ周辺やみぞおちの鈍痛」ですが、進行すると「右下腹部に激しい痛み」が起きます。ほかにも、吐き気・嘔吐、発熱、食欲不振も併発します。放置すると虫垂内に膿がたまってしまい、腹膜炎の発症リスクが高くなります。若年層から高齢層まで世代に関係なく発症します。
腸閉塞(イレウス)
腫瘍や胆石、手術後の癒着、腸捻転(ちょうねんてん)などが原因で腸の詰まりが起きてしまい、消化物がうまく運ばれなくなってしまう疾患です。腸の詰まりが起きることで便やガスが溜まりやすくなってしまい、腹痛や膨満感、吐き気・嘔吐などが併発します。
腹膜炎
腹膜炎は、胃や腸などの消化管に穴があいてしまうことによって引き起こされる疾患です。穴があいてしまうことで腹膜内に胃液や腸液、便などが漏れ、炎症が起きてしまいます。この疾患は、胃がんや胃潰瘍、虫垂炎、子宮外妊娠などの影響で発症してしまうケースが多いです。 吐き気や嘔吐だけではなく、腹痛や発熱、身体のだるさ、食欲不振なども起きやすくなります。腹膜炎は重症化してしまうと生命に関わってしまうので、疑いのある方は速やかに受診しましょう。
メニエール病
メニエール病は過労やストレス、睡眠不足などによって、内耳(中耳の奥にある器官)の内リンパ液が過度に増えてしまうことで発症する「内耳リンパ水腫」が原因で起きる疾患です。主な症状は耳鳴りやめまい、難聴、聴覚過敏、耳の閉塞感などで、吐き気や嘔吐も見られます。放置しておくと難聴や平衡障害が進行してしまい、完治が難しくなってしまいます。
吐き気・嘔吐が起こる病気の治療方法
様々な原因・疾患によって吐き気・嘔吐が引き起こされている場合があるので、併発している症状(腹痛や胸痛、めまい、発熱など)や既往歴、最近摂取した飲食物や薬剤などをお伺いしてから、必要な検査(血液検査や腹部エコー検査、胃カメラ・大腸カメラ検査など)を実施して、原因や疾患の特定を目指していきます。
吐き気・嘔吐が起きている疾患が消化器や内科的な治療・処置で完治できるものでしたら、当院での治療を進めます。 他院での治療が必要だと判断した際は、当院と連携している専門医療機関などのご希望の医療機関へご紹介します。
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